【iDeCo】退職金があると損する?課税されるケースと会社員の対策

退職金がある会社員ほど、iDeCoは少しややこしく見えます。
掛金は所得控除になる。運用益も非課税。ここまでは分かりやすいです。ただ、受け取るタイミングになると「退職金と重なったら税金が増えるのでは?」という話が出てきます。
先に結論を書くと、退職金があるからiDeCoが不要になるわけではありません。注意すべきなのは、iDeCoを一時金で受け取る場合に、会社の退職金と退職所得控除を取り合うケースです。
特に2026年以降は、iDeCoなどの確定拠出年金を先に一時金で受け取ったあと、短い期間で会社の退職金を受け取る場合に注意が必要です。国税庁の退職所得控除の説明でも、2026年1月1日以後に受け取った確定拠出年金の老齢一時金について、前年以前9年内の受け取りが調整対象になることが示されています。
つまり、iDeCoは「入るかどうか」だけでなく、「どう受け取るか」まで考えておく制度です。
iDeCoは受け取り方で税金の扱いが変わる
iDeCoの受け取り方は、大きく分けると「一時金」と「年金」です。iDeCo公式サイトでも、老齢給付金は年金または一時金として受け取れると説明されています。
税金の扱いは次のように変わります。
一時金で受け取る場合は、退職所得控除の対象です。年金で受け取る場合は、公的年金等控除の対象になります。iDeCo公式サイトでも、受給時の税制優遇として、一時金は退職所得控除、年金は公的年金等控除の対象とされています。
会社員が特に気にすべきなのは、一時金で受け取るケースです。
なぜなら、会社の退職金もiDeCoの一時金も、どちらも退職所得として扱われるため、退職所得控除の使い方が問題になるからです。
退職所得控除の仕組みをざっくり押さえる
退職金の税金は、給与とはかなり扱いが違います。
退職所得は、原則として次の計算になります。
「収入金額 - 退職所得控除額」× 1/2 = 退職所得
国税庁もこの計算式を示しています。
さらに、退職所得控除は勤続年数によって変わります。
20年以下なら「40万円×勤続年数」、20年超なら「800万円+70万円×20年を超える年数」です。
例えば勤続30年なら、退職所得控除は、
800万円+70万円×10年=1,500万円
になります。
会社の退職金が1,500万円以内なら、ざっくり言えば退職所得は出にくいです。ここだけ見ると、退職金の税制はかなり優遇されています。
ただし、iDeCoの一時金と会社の退職金を近い時期に受け取ると、この控除をそれぞれ満額で使えるとは限りません。
課税されやすいのは「退職金+iDeCo一時金」が近いケース
iDeCoで損すると言われる場面は、だいたいここです。
会社の退職金がある人が、iDeCoも一時金で受け取る。このとき、受け取り時期が近いと、退職所得控除の重複部分が調整されます。
特に注意したいのは、次のようなパターンです。
60歳でiDeCoを一時金として受け取る。
その後、65歳で会社の退職金を受け取る。
以前は「5年以上空ければ別枠で使いやすい」と考えられることが多かったのですが、2026年以降はこの考え方がかなり弱くなります。
国税庁の説明では、2026年1月1日以後に確定拠出年金の老齢一時金を受け取った場合、前年以前9年内の退職手当等が調整対象になる旨が示されています。
会社の退職年齢が65歳に伸びている人ほど、60歳iDeCo一時金→65歳退職金という流れは注意です。
会社員が見るべきは「退職金の有無」ではなく金額
ここは少し差がつくポイントです。
退職金があるからiDeCoが損、という考え方は雑です。見るべきなのは、退職金が退職所得控除をどれくらい使うかです。
例えば、勤続30年で退職所得控除が1,500万円あるとします。
会社の退職金が800万円なら、控除枠に余裕があります。この場合、iDeCoの一時金があっても、課税が大きく増えるとは限りません。
一方で、会社の退職金が2,000万円あるなら、退職金だけで控除を超えます。そこにiDeCo一時金も重なると、課税される可能性は高くなります。
つまり、重要なのはこの3つです。
・退職金の見込み額
・勤続年数
・iDeCoを一時金で受け取る時期
この3つを見ないまま「iDeCoは損」と判断するのは早いです。
iDeCoの基本的な運用や見直しについては、こちらの記事でも解説しています。
関連記事:
年金受け取りなら退職金との重なりは避けやすい
退職金との重複が気になるなら、iDeCoを年金として受け取る選択肢もあります。
一時金だと退職所得控除の問題が出ますが、年金受け取りなら公的年金等控除の対象になります。
ただし、年金受け取りが常に正解というわけではありません。
公的年金、企業年金、iDeCoの年金受け取りが重なると、毎年の雑所得が増える可能性があります。また、金融機関によっては給付のたびに手数料がかかる場合もあります。
そのため、退職金が多い会社員は、
・一時金で全部受け取る
・年金で分けて受け取る
・一時金と年金を併用する
この3パターンで比較した方がいいです。
特に退職金が大きい会社に勤めている人は、「一時金でまとめて受け取るのが一番得」と決めつけない方が安全です。
それでも会社員にiDeCoをおすすめできる理由
ここまで読むと、「退職金があるならiDeCoは微妙では?」と感じるかもしれません。
ただ、個人的には会社員でもiDeCoは十分に検討する価値があります。
理由は、受け取り時の課税だけで制度全体を判断するのはもったいないからです。
iDeCoには、
・掛金が全額所得控除
・運用益が非課税で再投資
・受け取り時も控除あり
という強いメリットがあります。iDeCo公式サイトでも、掛金の全額所得控除、運用益の非課税、受給時の控除が主な税制優遇として整理されています。
特に年収がある程度ある会社員は、掛金を出している期間の所得控除メリットが大きいです。
例えば毎月5,000円でも、年間6万円が所得控除の対象になります。金額は小さく見えますが、30代から積み上げれば、老後資金の別枠としてかなり意味があります。
iDeCoの少額拠出については、こちらの記事も相性が良いです。
関連記事:
会社員が今からやるべき対策
30代・40代の会社員なら、今すぐ受け取り方法を確定する必要はありません。
ただし、次の3つは早めに確認しておいた方がいいです。
まず、会社の退職金制度です。退職金があるのか、企業型DCなのか、確定給付企業年金なのかで話が変わります。
次に、定年年齢と退職金の支給時期です。60歳支給なのか、65歳支給なのかで、iDeCoの受け取り方も変わります。
最後に、iDeCoを一時金で受け取る前提にしすぎないことです。退職金が多い会社員ほど、年金受け取りや併用も候補に入れておくべきです。
このあたりを事前に見ておくだけで、「老後に思ったより税金がかかった」という失敗はかなり避けやすくなります。
結論|退職金がある人ほどiDeCoは出口まで考える
iDeCoは、退職金がある会社員でも使う価値があります。
ただし、一時金で受け取る場合は注意が必要です。
会社の退職金と近い時期に受け取ると、退職所得控除をそれぞれ満額で使えないケースがあります。特に2026年以降は、iDeCoを先に一時金で受け取り、その後に会社の退職金を受け取る人は、受け取り間隔にかなり注意した方がいいです。
とはいえ、これは「iDeCoが損」という話ではありません。
正しくは、「退職金がある会社員ほど、iDeCoは受け取り方まで含めて考えるべき」という話です。
30代のうちは、掛金の所得控除と非課税運用のメリットを取りつつ、50代以降に退職金見込みと受け取り方法を具体的に詰める。このくらいの距離感が現実的だと思います。
最後に、これからiDeCoを始めるなら、証券会社選びでは「商品数」「手数料」「低コストインデックスファンドの有無」を確認した方がいいです。
楽天証券やSBI証券のiDeCoは、低コストの投資信託を選びやすく、NISA口座とあわせて管理しやすいのがメリットです。すでに楽天証券で新NISAを使っている人なら、iDeCoも同じ画面で確認できるため、管理の手間を減らしやすいと思います。






























